「仕えるほどに…… 貴女に堕ちてゆく」
「その日、 僕はまた一人になった」
事故で両親を喪った主人公を引き取り、育ててくれた女性(ひと)。暖かく抱擁してくれた手を、今でも憶えている。
「もう大丈夫、怖がらないで……。今日から、わたしがおかあさんだよ……」
義母と10年続いた安らぎの生活。そんな義母に女性を感じはじめながらも続く二人の生活。そんな日常も、突然終わりを告げた。細々と続けていた学習塾は抵当に取られ、それと同時に行方をくらませた義母。呆然とする主人公の前に現れたのは、一人のメイドだった。彼女は冷徹に告げる。
「貴方は、本日付で四ツ谷家の管理下に置かれました」
わけも分からぬままに連れて行かれた先は、山奥の瀟洒な洋館。大正の香りを残すその館で、肌もあらわな女優のようなドレスを着た女主人が出迎える。気だるげな笑みと、零れ出た肢体に釘付けとなる主人公。そしてその館の使用人として働く事になる。
館での退廃的な生活。主人公が童貞であることを知った女主人の奔放な性のレッスン。裸での挑発、甘美な接触、そして童貞喪失。そのレッスンに飲み込まれるように溺れていく主人公……。繰り広げられる官能劇は、女主人の妹である女社長の登場によりエスカレートしていく。
官能と閉塞の日々は、やがてその渦を徐々に広げていく。まるで、館自体を飲み込んでいくかのように。
女主人に影のように寄り添うメイドとの、ただならぬ関係。
女社長と義母の、屈折した愛憎。
女たちの情念の絡み合う、終らぬ夜想曲。
「さあ……はじめましょう?」
館は、今日も眠らない。