桜子は俺の下着を平気な顔で洗う。
梓姉は、酔っ払うとすぐ絡んでくる。
翼のはしゃぐ声は嫌いじゃなかった。
ごく普通の日常だったんだ。
あの日、血が繋がっていないことを突然に知るまでは。
「何も変わらない」
みんなに言ったその言葉を、本当は自分自身も信じていた。
俺は、多大なショックを受けながらも、地下室で黙々と研究にはけ口を求め続ける。
そして、研究中だったNO21の薬液を完成させる。
その薬を使うと「見えなくなる」ことが出来た。
すべては最初から決まっていたかのようだった。
水面下の流れは急速に変化しだし、歯車は絶妙のタイミングで噛み合ってしまおうとしている。
家族に伝わった真実、薬の完成、父親不在の状況、重なる不運。
何より息を潜めてから見る光景は、俺の背中を押しつづけるものばかりだった。
3人の密談は俺に不信感をうえつけ、義姉となった梓姉が成す自慰行為の姿からは衝撃を受けた。
結果として、俺は本能が導く湿った忌まわしさにあっさりと捕まったことになる。
街に出た俺は、いらだちのまま薬を使用し、スガタを消して強引に女性をこの手にした。
地べたに座り込んでいる学生、かつての恩師、すれ違っただけの女性達。
道路の真中で・・公衆便所で・・ショールームの中で・・夜の公園で・・・。
最初の興奮から数時間経った。
−俺はまだ街にいる−
かつてない高まりは、俺に何度もスガタを消させ、また次の日も・・・。
その後、俺は自宅へと帰宅し、再び三人との暮らしをはじめた。
新しい暮らしを。