都会の喧騒から離れた、ド田舎の小さな町。
その町から少し外れた田んぼの真ん中に、
一軒の駄菓子屋がぽつんと建っていたそうな。
その店の名前は「ひより」。
誰も気づいてはいないが、その駄菓子屋には張り紙がしてある。
店と同じぐらい年期の入った古く、黄ばんだ紙に書かれた文句。
『魔法有リ□』
ただのイタズラのような一文だが、嘘ではない。
実はこの駄菓子屋には、現代に残る数少ない
魔法使いの一人がいる。
それがこの物語の主人公となる、
久津 誠人(ひさづ・まこと)
魔法使いの血を受け継いだ彼だが、
だがしかし、彼はろくな魔法が使えない。
何故なら、唯一の肉親であった
祖母・久津珠江(ひさづ・たまえ)は、
彼に何も教えずに逝ってしまったからだ。
そんなわけで、今日も誠人は店先で、
愛猫・シュレディンガーとともに
日向ぼっこをしながら、駄菓子屋の主人として
居眠りを続けている。
そこへ尋ねてきたのが、一人の少女。
「魔法、ひとつくださいな」
彼女は「魔法有リ□」と書かれた張り紙を見て、
誠人に注文したのである。
訪れた、ちょっと夢見がちな少女、
鷹堂凪穂(たかどう・なぎほ)の願いは、
「私も魔法使いになりたいんです。
だって、楽しそうじゃないですか」
という、シンプルでわかりやすいものだった。
ろくな魔法を使えない誠人だが、
断りきれずに承諾。少女・凪穂は駄菓子屋に
住み込んで、魔法使いになるための修行を
することになる。
やる気のなかった主人公も、彼女に触発され、
魔法を習得するための修行を開始する。
こうして凪穂、面倒見のいい従姉妹・クーティ、そして、謎の女性・ユマらとともに、
駄菓子屋を舞台にした主人公の慌しい共同生活が始まる。