帝都コンスタンティノヴァールに着いた大使と私たち随員は、ロンバルディア大使館に仕事場を構え、若手の私は、近くの一軒家を借り切ってそこを宿とすることになった。
「なに? 召し使いも連れずに来たのか。それはなにかと不便だろうな。よし――」
ヴェネツィアでは有名なプレイボーイとしても名高い旧友のファルコは、まだ右も左もよくわからない私を、帝都でも最大のバザール――市場へと連れていった。
「親友の君を散財させたりしたら地獄に落ちる。最高級というわけにはいかないが…」
そう言って彼が私を連れて来た場所は――高い塀に囲まれた建物――窓のあるべきところに牙のような鉄格子が並ぶのを見て、そして、鉄格子の奥にあるぼろ布と汚れた肌を見た時――私は、ここが悪名高いあの「○○市場」のひとつだと悟った。
言葉を失っている私の前に、この店の主人が姿を現し、その不自然なまでに艶のいい顔に純粋な友情としか見えない笑みを浮かべて我々に会釈した。ファルコが、主人と話しだす。
「…こちらの騎士は、私の親友だ。もし病気持ちや性根腐れを売りつけたりしたら…」
「…まさか。そのようなことをしたら灼熱地獄に… しかし、残念ながら品不足で…」
「仕方ない――見るだけ見るかい? 君好みのがいたら、値切ってやるから言いたまえ」
親友の問いに、私がつられてうなずくと――店の主人は、鉄格子の奥から、ぼろをまとい、鎖につながれた三人の少女を引きずって来た。
金の髪に黒い髪、白い肌に蜜色の体。そして、絶望すら奪われた顔、瞳、瞳…
「…では処女かどうか、お手汚しを… すぐ、香油を用意いたしますので……」