俺の名前は中村詠二(なかむらえいじ)、神父をやっている。
ただし…自分で言うのもナニだが、我ながらいい加減な神父だと思う。
まぁいわゆる不良神父ってヤツだけど、広い世界の中には俺みたいな軽い神父が居ても良いんじゃないの? って感じだよ。
さて、俺は今でこそ神父なんて商売をしてるが、学生時代は頭の固い両親と折り合いが悪く、家を飛び出してアパートに独り暮らしをしていた。
かなりやんちゃな遊びをしたり、喧嘩三昧の日々でよく卒業出来たモンだが……卒業と同時に俺は欧州に渡り、バイトを続けながらあちこちを点々としたが、その結果行き着いたところはイタリアだった。
地中海を望むローマの小さな教会で下働きとして手伝ううちに、俺はすっかりソコの神父とうち解けあってしまい、洗礼を受け自らも神父としての修行を積んだのだ。
イタリア暮らしを気に入っていた俺だったが、やはり俺も日本人なのだろう……ふと故郷のことを思い出し、居てもたっても居られなくなってしまった。
こうして俺は7年ほど暮らした欧州の地を離れ、懐かしい日本へと飛んだのだった。
……決してローマで女関係のトラブルを起こしたからではないぞ!? うん。
日本に帰って来て、真っ先に顔を出すところは決まっている。
それは無論「真理亜(まりあ)」さんの所に他ならない!
そう……学生時代、アパートに独り暮らしをしていた俺に、誰よりも親切にしてくれたのは隣室の住人の「長崎真理亜」さんだった。
彼女はシスターとして教会で奉仕活動を行いつつ、女手一つで一人娘の晶(あきら)を育ててきた未亡人で、まさに俺にとってのマリア様なのだ。
本当の親には手紙一つ書いたことのない俺だったが、彼女にだけは毎年クリスマスカードを送ったモノだっけ……
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