あの日、夕日の土手でボクは告白した。
その人はボクの初恋の人。○い頃から姉のような人……
早くに母親を亡くし、父親が仕事で留守がちだった彼女は○い頃からボクの家で暮らし、ボクはそれを当然のように受け止めていた。
だけど、短大へ進んだ彼女はボクの家を離れて暮らすという。
だからボクは、彼女に自分の気持ちを打ち明けたんだ。
沈黙、照れた表情……そして……
やっと彼女が口を開いたとき、風の音と電車の騒音が彼女の答えをのみ込んでしまった。
後に残ったのは、ただ困ったような微笑を浮かべる彼女だけだった。
結局、返事は聞けなかったんだ……
それから数年が経って、オレ自身も大学に進み実家を出てしまった。
あの日のことは、過去に終わった思い出。
今は単位のことや就職のことなんて考えないとならない。
後は……不出来な妹・初(うぶ)の家庭教師をしないといけない。
親父もお袋も兄貴の結婚式とかでハワイにいる。
その間、浪人生の初の家庭教師兼、見張りのため、実家に戻ることになったんだ。
ただそれだけのつもりだった……
その日、彼女と再会するまでは……
あの日の夕日と同じ色の空の下で、彼女は立ちすくみ微笑みを浮かべていた。
あの日の気持ちは“過去に終わった思い出”じゃなかったらしい。
自分の中でもう一度なにかが動き出した……
ただそんな気がしていた。