神奈川県の山間部の田舎町『三石町』にある超進学校『私立檜山学園』。
そこに一人の男子生徒が転校してきた。
この学校に、転入してくる学生は皆無である。
それは高い学力を求められるだけではなく、有力者の父兄による推薦が無くては門を叩くことすら許されないという、エリート養成学校だからだった。
さらに、こんな山奥の男子校にわざわざ東京から男子生徒が転校してくるなんてことは、どう考えてもあり得ないことだった。
でも、例えそうだとしても男子生徒、『石田秀一』は事実転校してきた。
もともとこの町の出身の石田にとって、特に深い理由は無いのかもしれない。
ただ町が懐かしかくなってしまったから……かもしれない。
両親を事故で亡くしてしまった彼にとって、ホームシックというのとはどこか違うだろう……
とにかく石田にとって、ここはふるさとで、帰る場所だった。
彼は転校してきた。
何事も無く、普通通りに時間は流れる。
季節が流れ、檜山学園にとって非常に大切な行事が迫ってきていた。
それは大生徒会。
生徒たちによる学校自治という伝統に基づいた行事で、夏休み後の一週間にそれは行われる。
大生徒会の始まりと共に、淫靡で悲しい事件の幕が開く。
一体、石田はなんのために、檜山学園に戻ってきたのだろうか?
その答は大生徒会の中にある。
今、ただひとつ言えることはこれだけである――
現実に希望が無いように、この物語にも希望は無い。