深々と桜が舞っていた。一年中絶えることなく、その島では薄桃色の桜の花が咲き誇っていた。――季節は冬。地面にうっすらと霜が降り、空からは純白の結晶が舞い落ちる。吐き出す息も白く色づき、布団から抜け出すのが憂鬱になる季節。だと言うのに、
――「相変わらず、季節感のない景色だよな」
通学路の並木道を歩きながら、少年――“義之”はそう呟いた。
「まあそれが初音島名物『枯れない桜』だしね」
「や、今更そんなことをしみじみ言われても」
少し前を歩く二人の少女が振り返る。ひとりは楽しそうに笑顔で、もうひとりは少しかったるそうに。それも見慣れた景色。少年は春のように咲き誇る桜の木々を見上げて、白い息を吐き出した。
間近に迫るクリスマスパーティー。そして、年が明けたら付属最後の学園生活がはじまる。……出会いと、別れ。喜びと悲しみ。そこにはどんな日常が待っているかもわからない。でも――、何かが変わりそうな気がする。
ゆらり、ゆらりと舞い落ちる桜の花びらを眺めながら――少年は少し先の春を夢見た。
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