突然の事故で両親が死んだ。まだ学生の僕と義妹の“マユ”は途方に暮れた。親戚の間で辟易するような僕たち兄弟のし付け合いが演じられた。両親には何の財産もなかったのだ。結局、“ナツミ”義姉さんの結婚相手の“君島さん”が面倒を見てくれることになった。
結婚してまだ1年目の義姉さんの家にお世話になるのは気がひけた。しかし、学生である僕にはどうしようもなかった。僕自身は学生を辞めても良かったのだか、義妹のマユだけは何とかしてあげたかったからだ…。
僕たちは高級住宅街の一角にある君島さんの家に移り住んだ。学園は少し遠くなってしまったが、家も広く僕とマユはひと部屋づつ与えられた。奇妙に思ったのは君島さんとナツミ義姉さんの寝室が別々ということだった。
「お部屋がたくさんあるからね…」ナツミ義姉さんはそう言って笑った。そしてその家には君島さんの義妹のヨウコさんも住んでいた。確か結婚式で見かけて「綺麗な人だな」と思った記憶がある。“ヨウコ”さんは大学に通う為に、君島さんの家に住んでいるらしい。
一緒に住む前に君島さんから言われたことはただひとつ――「地下にある僕の仕事場には近づかないように」。もちろんだ。しかし、君島さんの言い方はわざと僕に興味を惹かせるような言い方だった…そんなふうに、僕とマユ、そしてナツミ義姉さん、君島さん、ヨウコさんの新しい生活が始まった。