恋色に彩られる、不思議の里の物語――。
人里離れた『もののけの里』で育った主人公(人間)と、もののけの里に暮らす女のコたちが織り成す、ちょっと不思議な物語。
●あらすじ
人里離れた山奥にあるうち捨てられた村にひっそりと妖怪たちがすんでいた。
村を取り囲むようにそびえる山々、そして古い土壁と木造の家屋……
まるでここだけ時間が止まったかのようなそんな錯覚にもとらわれてしまう古い村である。
その村の診療所に住む少年【陸(りく)】が主人公の物語。
陸は診療所の若い医者である【若先生】と、
その飼い猫である年老いた猫【お師匠(ししょ)さん】との二人と一匹暮らし。
そして陸はこの妖怪の村でただ一人の人間の子だった。
両親を小さい頃になくし、ずっと妖怪に育てられて来たのである。
妖怪たちの暖かい見守りの中、陸は寂しい思いをすることなく、この村でのんびりと暮らしていた。
時間の流れを忘れさせてくれるようなそんなのどかな村に、小さな事件が起きる。
夕焼けのすごくきれいなある日、若先生が一人の人間の女のコを連れて帰るのだった。
名前は【夕奈(ゆうな)】。くりくりした目の良く笑う女のコ。
両親とはぐれてこの村に来てしまったらしい。夕奈はどこから来たのかも、
どこに帰ればいいのかもわからず、連絡先もわからないと答えるだけだった。
そこで両親が見つかるまで、診療所で夕奈を引き取ることになった。
そして陸が夕奈の面倒を見ることになる。
今まで妖怪たちに面倒を見てもらった分、
夕奈の面倒を見てあげようと心に決める陸だった。
それは夏も終わり、秋にさしかかる頃の事だった。