私は“遊佐清司”。ごく普通のサラリーマンだ。
今日は妻は不在。一人で出張帰りの荷物を整理していると、遠くで雷のような音が聞こえた。
窓の外を見てみると、さっきまで晴れていた空が、いつの間にか厚い雲に覆われ、そしてすぐさま──雨が降りだす。
【麻由】「きゃー、戸閉めて戸閉めて」
【玲奈】「急に降ってくるんだもん」
【麻由】「あ〜、もうビチョビチョ」
どうやら、帰り道で土砂降りにあたった様で娘の“麻由”と隣の宮森さんちの娘さん“玲奈”ちゃんがずぶ濡れで帰ってきた。
私は、お風呂にでも入ってきなさいと、身体を温めることを勧める。
麻由は玲奈ちゃんに先に入るよう勧めるが、そこは家の人が先、と押し切られる形で、浴室に入っていく麻由。
残された私と玲奈ちゃん。
透けて見えてくる玲奈ちゃんの胸元に、意識しないようにしながら、なんとかしなければと思い、手近なワイシャツを手渡した。
「風邪を引かないように、これを着て待っていなさい」
その時、大きな雷鳴が鳴り、部屋の中が暗くなった。
停電らしくリビングの中は夜みたいに真っ暗。薄暗いどころじゃない。
だが、問題はそこじゃなかった。
停電したこと以上に、このときの私には大きな難題が降りかかってきていた……。