窓の中の男

「俺は男の裸に興味があるのではない。覗くという行為に、興奮するのだ」
大学水球部員が目撃してしまった、向かいの家の男の自慰行為。目が離せないまま、彼と男は奇妙な共犯関係を築いていく、そしてついに出会いの瞬間が訪れるのだが…。

月刊ゲイ雑誌・G-men No.183に掲載された、男×男の露出小説を配信！ 露出系小説を数多く発表する人気作家・夏田涼介が描く、覗く男と覗かれた男が邂逅する、アツい発情の物語

大学水球部員・航平の自宅向かいのアパートで、火事騒ぎが起きた。しばらくして、そのアパートは取り壊され、二階の航平の勉強部屋からは、一軒先のアパートの一室が見下ろせるようになった。

ある晩、そのアパートの部屋の住人が、帰宅してくるのが航平の目に入った。年齢は二十代後半、色黒の屈強そうな男であった。途端に興味を無くした航平であったが、その男は自室のTVでアダルトビデオを見始めた。航平の目にも、全裸になったその男の欲情ぶりは明らかだった。かつ、性器の雄々しい成熟ぶりに、航平は目が離せなくなってしまい…。

翌日、航平は水球部に顔を出した。ビキニタイプの競パン一丁の部員だらけで、誰も他人の裸など気にはしない世界に、航平は「昨日の俺は、どうかしてたんだ」と冷静さを取り戻そうとするのだった。しかし、その晩も向かいの窓の中では、あの男が素っ裸で立ったまま、テレビの○○な映像に見入っていた。昨夜より激しい昂ぶりが、航平を襲い、彼もまた全裸になり…。

月日が経ち、航平の家と男のアパートの間の空き地に、新たなアパートが建設されたことで、航平の中で男の記憶は次第に薄れていった。そんなある日、航平のバイト先であるタイ式マッサージの店に、ある男性客がやってくる。密室で男性客の秘部に、オイルマッサージを施す航平。客が仰向けになったとき、いきり勃ったその性器に、航平は目を奪われると同時に、ハッと記憶が蘇る。「あの男だ！ 窓の中の、あの男だ！」意図せず果たされた再会に、航平が取った行動とは…。

『後輩たちの裸体をいくら見てもぴくりとも反応しなかったモノが、いまは痛いほどに下着を突き上げていた。航平は下着の中に手を突っ込み、位置を変え楽にした。
男は尻を揺すりながら、盛んに右手を動かしているようだった。背中に隠れて、確かな手の動きはわからなかったが、右肩から肘にかけて小刻みにあるいは大胆に、そして実に熱心に、淫靡な動きが続いた。
仁王立ちの後姿は、航平の目を釘付けにした。
右手も左手も、時が経つほどに、次第に荒々しい動きを帯び、尻は開かれ、腿の筋肉は倍ほどに膨れ上がって、男は吼えながら身悶えた。本当に吼える男の声を航平は聞いた気がした。絶叫していても不思議ではない。それほどの荒ぶれようだった。
昨夜よりもさらに激しい昂ぶりが、航平の肉体を押し包んだ。
いつの間にか、航平も立ち上がり素っ裸になっていた。
立ったまま、獣のように尻を振りたてる男を、航平は後ろから抱え込んでいた。
男の固く閉ざされていた尻の谷間を押し分け、やわらかい窪みに、火のように熱くなった肉棒をうずめ込んでいた。腰を振れば、男は喘ぎ、自分から尻を揺すってくる。航平は夢中だった。夢中で腰を振り、男の肉を貪った。
そんな夢想が、窓の向こうで繰り広げられる現実の狂態と折り重なり、航平もまた低く吼えていた。吼えながら、男の尻を○し続けていた。』（本文より）