今夜も電話が鳴る。「お兄ちゃん……会えなくて寂しい……」
それは死んだはずの妹の声……。最愛の妹を失ったために、激しい喪失感に苛まれる主人公。心の空隙を埋めてくれるものを求め、目的もなく街を彷徨う。どこをどう歩いたのか、主人公は妹・夕実の通っていた学校の前に来ていた。
校門から出てくる少女達の中に、見知った顔がある。相葉希更、大野愛梨、二宮未夏の三人。主人公が一方的に知っているだけで、向こうは主人公のことは知らない。夕実のシステム手帳に貼られていたプリクラの中で、夕実と共に笑っていた少女たち。彼女たちの会話が、主人公の耳に届く。目の前に夕実の兄がいるとも知らず、少女達は夕実の話題に興じる。
夕実が不特定多数の男性とアブノーマルなSEXにふけっていたこと。その写真が裏で流されていること。……そんな会話が耳に入る。少女達にとってみれば、これは他愛のない日常会話でしかない。多少の悪意は含まれているとはいえ、誰が誰と付き合っているとか、そんなレベルの話である。悲嘆に暮れ、悲劇のどん底にいるような気分で、誰かが救いの手を差し伸べてくれるのを期待していたのか。夕実は死んだ。俺の愛した夕実は、もうどこにもいない。その事実から目を背け、ありもしない助けを待ち望んでいた結果がこれか。
夕実を見殺しにしたやつらに、一体何を期待していたのだろう。これ以上傷つくまいと攻撃的な感情をすべて放棄し、夕実の名誉を守ろうとはしなかった。その結果がこれなのだ――死者を興味本位で笑いものにする少女達に対して憤りを覚えたが、それ以上に自分自身の甘さに対して腹が立った。夕実を失い、その名誉を傷つけられていると知った今、失って惜しいものなど何もなかった。
主人公は復讐を決意する。