「こんな家、出ていってやる!」そんなコトを誓ったのは、もう一度や二度じゃない。犬神町に住む矢嶋良吾は、そんな不遇の日々を送っていた……。
そもそもが喧嘩っ早く、○○の頃からやっていた実践空手の道場で頭角を現し、中学に上がる頃にはほぼ無敵。妹を産んですぐに夭折してしまった母親、大学教授という職業柄、留守がちな父親。その歯止めの利かない状況に、良吾は力でねじ伏せた舎弟を率いて大暴れしていた。そう、その頃までは確かに……荒みながらも波乱に満ちた、気ままな生活を送っていたのだ。そんなある日・・・・・・・・・
一人の女が家にやってきた。オヤジの後妻を名乗る「律子」という妙齢のいい女。が、ソイツはただの女じゃなかった。修羅のような剛胆ぶりと残忍さで、たった一人で良吾の率いていたチームを壊滅させてしまった。良吾自身も生まれてこの方味わった事のない恐怖を体験させられ、よく生き残ったと自分の丈夫さに感謝した。それからというもの……良吾は彼女が教師をやっている学校に○○編入され、その容赦ない監視下の元、毎日を過ごしていた。
そして、今年に入ってもう幾度目の家出を決意したその日、家に来客があった。その客は……良吾よりも年上とおぼしき若い女で、何故か紅白の着物を着込んでいた……。