『乗車した人が消える列車がある───』。
そんな噂が、その手の話が大好きな人間達の間で近頃囁かれていた。
大半の人間は、『昨今の都市伝説ブームにあやかって流布しているにすぎない』と一笑に付し、さして気にも留めなかった。
だが───。
───列車は、実在した───。
特急【満潮(みちしお)】───。
二十年以上も前から進められていたという、特殊な性奴を発掘、開発する計画───
───【特別性奴創造計画】。
単なる性奴ではなく、飼い主が気を使わずとも主人のどんな要求にも応えられる、
美しい性奴となる素質を持つ女を選抜し、育成する───。
そんな計画のために、巨額の富を費やして開発された列車だ。
普段は、日本列島を縦断するという点以外は特に変わったこともない、
しいて言えば速度よりも旅を楽しむことを目的として様々なサービスを充実させたというだけの、極普通の寝台列車。
だが二〜三ヶ月に一度、【満潮】は特定客に対してその本性を現す。
特定客とは、つまり───【美しく魅力的な女性】だ。
特定期間内にこの列車に乗り込み、選ばれてしまった女達は…
列車を降りることを許されず、その肉体を欲望のままに貪られ、
精神を病むまで○○行為に晒されるのだ。
そして躾を終えた女は、主人のあらゆる要求にも応えられる、
最高の性奴となる───。
この列車は、政財界の名立たる面々がスポンサーとなって開発された、
特殊な性奴開発用のいわば躾専用列車だった。
そして俺───【海堂精治(かいどうせいじ)】は、
裏社会のスポンサー共に選ばれた、この【満潮】の【車掌】だ。
この【満潮】において、俺にはあらゆる権利が与えられている。
女をどう扱おうと俺の自由であり、事が明るみに出さえしなければ、
大抵のことは許されるのである。
それだけ、俺の能力が買われているということだ───。
───女を見繕い、磨き上げる能力が。
そして───二ヵ月半ぶりに、特急【満潮】は本来の役割を果たす時がやってきた。
車掌としての通常業務にも、そろそろウンザリし始めていたところだ。
久々に燃え滾る想いを胸に秘め、俺は野望に満ちた笑みを浮かべた───。