既刊全2巻(一応、R-18指定本です)の本編で描ききれなかった細部や、細かな設定、素朴な疑問を4コママンガで大放出。もちろん、基本設定さえ押さえておけば、既刊がお財布の都合や年齢の問題で読めない方でも獣分楽しめる内容です。

もう、ど頭から甲斐甲斐しいインクが大映テレビの30分ものドラマかと思う程の拓の自宅でほのほのひとつ屋根の下ラブラブ同棲生活。こんな淫魔ならいくら居てもOKと言うくらいの理想の”俺嫁”です。（オタの説明は放置が一番。）

片や1巻裏表紙、2巻で全貌が明らかとなる狼獣人ヴォルと意外な血筋とグッズ趣味（多分本を書くための資料と推測）を兼ね備える同人作家・信彦のどっちかというと、インクたちとは真逆の一つ屋根の下同居生活。ただ、このギクシャクがたまんないフルスピードの恋を今。こっちはこっちで次巻以降でカップル成立、出来上がってしまいそうな予感。（奥手はフル装備で押し倒すのが一番。）

もちろん既刊全2巻買って続けて読むとコマ枠の謎解きとメチャシコが捗ります。激しくおススメ！

既刊第3巻で登場したゆきちゃんの熱い視線は、やはりトムさんに向けられていた事を改めて知る事から物語は始まります。カメラのファインダーから覗く被写体の微笑みが無意識に放つ男性的魅力を焼き付けられた印画紙。憧れから始まる一方通行の「想い。」狭い世界ではそれを口にする事はおろか相手に伝える事など許されない「筈。」ふとその写真を見て、エナ君はすぐに思い出します。以前自分を救ってくれたヒーロー、その人だと。その人の背中を追ってきた、その「想い。」は大声になり「お願い、この人に逢いたいんだ！」ゆきちゃんにも届いてしまいます。伝えられない想いを抱えた「想い。」と、伝える為に生きてきた「想い。」それはどちらも同じトムさんに向けられ、複雑に絡み合いながらも二人の想いはそれぞれの着地点を辿る。

今回も素敵な時間をありがとう。ただ、ほんの少し胸を締め付けられ素直におめでとうとは言えない、目を真っ赤にした自分がここにいる。もう一言だけ「自分の魅力を無意識に振り撒く奴は手に負えない。」モテモテのトムさんに嫉妬。

この「恋愛整備3」はシリーズ1、2、と時間軸的に遡る更に以前のお話しとなります。

整備工場を営むトムさんとシリーズ2で登場した源さんに加え、新キャラも登場しトムさんの独白と周囲の心配を軸に話しが進んで行きます。その分今回もエッチな描写は少なめですが、多分作者さんもトムさんの事が大好きなのかなという気がして。

中年で独り身であるが故の不精と寂しさに満たされている日常に舞い降りる光。文字面で表すとまるでファンタジーで、大人のためのおとぎ話を、今回も本当に作者に愛されているキャラクターたちが叶えてくれる素敵な時間。

読んでいる間は、どことなく昭和の田舎を思わせる背景描写もあいまってゆっくり過ぎていく時間に、自分自身が物語に引き込まれて行きました。（どっちかというと、レビューア私自身、実年齢がトムさんに近いので、特に独り身の寂しい気持ちと周囲の圧力は良く伝わります）

これからも長く続いて欲しい作品です。