作者の他作品と比べると性描写は控えめ。
心情の描写もやや淡白だが、それが一層悲しみを深く感じさせる。
最初に結論を書いてから、主人公の心情を回想形式で追体験する、という形式。
悲しい結末だと分かっているからこそ、そこに至る出来事も、何気ない会話も、表情の変化も、残酷なほどきれいで、苦しくなるほど愛おしい。
「水中」のイメージが現実と回想をうまくつないでいて、「水中では言葉が伝わらない」のに「水中でないと本音が言えない」、という矛盾が全体を通してうまくまとめられていると感じた。
儚くて悲しいお話が好きな人におすすめ。