「いってきます」 笑顔で手を振り、出勤のふりをして出て行く太一。嘘と知りながら、私もそれを笑顔で見送る。いつから私たちはこんな歪(いびつ)な関係になったのか――。 太一が戻って来る前に、できるだけ遠くへ。私は二度と戻らないつもりでタクシーに乗った。