「ニット帽」さんのレビュー記事です。全1個の記事が掲載されています。
アナタとの購入傾向の類似度:

5/5(5.0)

手が届く物語、手が届かない物語

投稿者:

ニット帽

掲載日:2015年12月22日

このレビューは、2人中、2人の方が「参考になった」と投票しています。
デイグラシアの羅針盤
デイグラシアの羅針盤
ビジュアルノベル
2160円2060円 ポイント300還元
シリアス ミステリー

[一般同人]レビュー記事

物語の類型として「ループもの」と呼ばれる類の、人生の「やり直し」をテーマとする作品があります。
「やり直す」ための手段は魔法であったり、機械であったり、作品によってまちまちです。
しかし多くの場合では「やり直し」の果ての結果として、失ったものを取り戻し、物語は決着を迎えます。

そうした展開を見る度に私は、登場人物との剥離を感じて寂しく思っていました。
当然ながら、現実世界では本当の意味で「やり直す」ことは絶対にできません。
だから、過去への挑戦に奮闘する登場人物の姿を、「手が届かない」遠い存在に感じてしまい、嫉妬にも似た疎外感を感じてしまうのです。

そんな狭量な私にとっても、この「デイグラシアの羅針盤」は、最後まで「手が届く物語」でいてくれました。
複雑怪奇な運命に心傷つけられた「彼」が、最善の結末を目指し続ける姿を、見守ることができました。

それはこの物語の終着点が、私達の生きる現実と地続きであると思えたからです。
これまでずっと見たかった物語の一例を示された気分でした。

「彼」にあれほど過酷な運命を与えた決断に、感服の意を。
そして、この複雑で知的な物語を完成させた手腕に、感謝の意を覚えます。