「これから記憶が無くなったとしても恐くないよ。 あなたが覚えていてさえくれるのなら」 『未来の無い』少女が言う。 毎日をくり返し、積み重ねて行く事が未来であるのなら、彼女にはまさにその『未来』が無かった。 『前向性健忘』 別名『くり返し病』とも呼ばれるそれは、記憶も未来も新しく気付いた気持ちさえも無かった事にしていく呪い。 「人は間違ったらやり直すべきだ。だが繰り返すべきじゃない。 そんな事が本人の意思と無関係に起こっていい筈が無い」 『過去の無い』男が言う。 そして2人は互いに欠けた『過去』と『未来』を取り戻すべく旅に出る。 自分達のいる世界が既に『くり返しの世界』となってしまっている事さえ気付かないまま……